年単位の長期休暇の導入による職業生活の再設計をめざして






公募結果
■応募状況
応募総数33点(体験談部門4点、夢・計画部門25点、分類不明4点)

■採点基準
模範性:長期休暇活用の型となるもの
展望性:共有できるビジョンを感じとれるもの
普遍性:普遍性を感じられるもの
独創性:オリジナリティを感じられるもの
促進性:長期休暇導入の励みとなるもの
訴求性:非常にやる気があり、読み手が応募者を元気づけたいと感じるもの



■選考結果
【体験談部門】
○最優秀賞 図書券10万円分(1編):該当作なし
○優秀賞 図書券3万円分(2編):該当作なし

【夢・計画部門】
○奨励賞 図書券3万円分(3編):
・平渡 麻子 氏(青森県)「四十歳にして、一年休む」
・中島 聰 氏(奈良県)「長期休暇・私の具体的プラン」
・長尾 松代 氏(神奈川県)「リフレッシュでリフラッシュ」

■入賞作品

「四十歳にして、一年休む」平渡 麻子

 私は今39歳。
決して若いという年令ではないが、しばし老年には間がある。子どもは二人とも、小学生である。父は亡くなり、母が独り暮らしで健在である。
 そう…私は今、全てがまん中なのである。人生の丁度どまん中。両手を広げてみればどっちからもひっぱられる。若い世代からも、年上の世代からも……。でも、私は、しっかりと、まん中に立っている。そして、ふり返る。今迄の自分の歩いて来た道を。
 39歳は、難しいお年頃である。同級生達をみても、みんな何かしら、揺れ動いている。自信に満ちあふれていたAさんも、次々と仕事を替えてきたBさんも、専業主婦で子育て第一主義で来た私も、何だか、ここで小休止といった年頃なのである。
 私は仕事を持たぬ身であるが、独身時代に、10年間の会社員生活を送った。仕事は忙しいものであるし、民間企業である以上、利益をあげることに、日々埋没してしまうのがあたりまえである。ふと立ち止まって、自分をふり返る暇などあるはずがない。止まったら、遅れてしまうから。
 でも敢えて、私は提案したい。40歳の誕生日から、一年間、仕事を休める制度を作ることを。その一年間は、人生のテーマについて、再構築する期間として、どのように過ごそうと、本人の自由である。自分なりに納得できる一年間を過ごせれば良いのである。
 さて、この夢が実現したこととする。我家の場合、会社員の夫が一年間、家に居ることになる。夫は、完全なる理系人間であるのだが、実は歴史マニアでもある。休日は、何とか史跡巡りをしたいのであるが、子どもや妻の冷やかな視線に負けて、結局、公園に遊びに行ったり、買い物の荷物持ちになってきた。でも思う存分、好きな歴史の本が読め、行きたかった史跡へ、旅に出られる。また、発電所に勤務する夫は、色々な発電所を見学することも好きである。よく、デートの時、発電所ばかりに連れて行かれ閉口したものである。こちらもどうぞ、心ゆくまで見てくればよい。子ども達だって、大喜びのはず。学校から戻ると、優しい父親がいるのだ。口うるさい母に細々と言われ続けるのはごめんだ。
 家族力という力…。これこそ、社会生活の基本であると、私は考えている。家族が安定した心で、互いに尊重し合って、生きていくこと。それが、全ての力に通じている。良き家族との暮らしは、会社の力にもなっていくことだろう。目先の利益の10倍の利益を、もたらすかもしれない。
 夫が家に居てくれるのならば、私も実現できなかった進学の夢をかなえてもらえるかもしれない。子育てを経験して、子育て期の女性の厳しい現実を、目の当たりにしてきた。地域のつながりがあまりない時代である。そんな中、母子密着の子育てを強いられる。母親がよりよく生きられる道を探したい。そのために進学させて欲しい。いいでしょうか。
 私の留守中は、家事は夫の役目。定年後に備えての練習にもなるし、家事も意外に重労働であることを学んでもらうのだ。私も仕事を辞め、家庭に入った時、家事の仕事の多さに驚いたものである。
 夏生まれの夫の休暇。最後の1ヶ月は、夏休みの子ども達との旅行にあてる。1ヶ月間、親子24時間一緒にいること…。ぜいたくなことである。長い会社員生活の中で、大きな支えになるはずだ。
 こうして、一年を終えた我家の休暇。やはり、人生のまん中に立つ私である。でも、よく見ると、視線の方向に変化が見られる。私は、未来を見つめている。そして、夫や子ども達も、やはり未来を見つめていることだろう。


「長期休暇・私の具体的プラン」 中島 聰

 私は20年前に大学を卒業して商社に勤務している。ずば抜けて高級待遇ではないが多少の山谷はあってもそれなりに楽しく仕事はしているし、何より愛すべき家庭もある。リストラや転職する友人などを横目で見ながら、贅沢を言わなければまあ暮していけるのだろうと考えている。
 しかし40歳を境に考え方が変わってきた。20年も社会にいると仕事以外にも人脈もできる。世間も広くなる。それに残りの人生を無駄なく生きたい、或いは人の為に尽くしたいとも考える。また今でなければ人間の能力的に新たなものを吸収できなくなると言う不安もある。つまり自分にとって最善の道や幸せとは何かと思うようになる。しかし何をしようにも仕事でも家庭でも最も多忙な時期が今でもある。あれこれ経験したいと思っても具体的な行動はとれず、憧れだけで終始する。
 そんな時、友人から厚生労働省の年単位の長期休暇制度の導入と言う制度の普及活動がある事を聞いた。最初は一笑に付した。あり得る話ではないと思ったからだ。しかし現実に実行している会社もあると言う。次第に興味を覚えるようになった。
「年単位の休暇・私のプラン」
 まず1年も現場を離れるという事に関してだが、個人的に目先だけを見ればマイナスであろう。しかし現状を見よう。大手・中小関係なくジリ貧で新しい発想も工夫もないのにリストラと言う首切りだけで一時的な収益をあげている企業が多い。それなら現場から1年離れても自己責任で新たなスキルを習得したほうが差し引きプラスになると言うものだ。私には現場を離れる不安はない。
 またお金のことであるが、私は休暇の1年に生活費抜きの500万円の予算を考えている。年収を考えればこの時期に大きな出費ではあるが余り気にならない。得るものに対する期待が大きいからかもしれない。
 具体的なプランだが、これは机上の空論ではいけないので実際に関係の所に問い合わせた上で可能と判断された結果である。
 まず最初の6か月、アメリカに単身渡り専門商社のフレミングのできればマーケッティング部門で見習いとして勤務する。もとより給料など貰うつもりはない。流通業界で独自のポジションを採る企業で最前線の実務に関わる経験を積みたいからだ。現地在住の知人が身元保証人を買って出てくれている。また同知人の紹介であるが地元に経営のコンサルタントをするNPOがあり、そこには米国の多くの企業の有能な人達が参加されていると言う。そこに加わる事で生きた経営と人脈を身につけたいと考えている。
 10月には帰国するがそのまま東京に入る。都内に本社のある有力な商社で年末まで雇っていただく。勿論無収入のつもりである。超一流と言われる商社の仕組み人脈は他の想像を遥かに越えている。どこまで使ってもらえるかは米国での実績次第であるが、信用面は大学時代の教授に保証していただける事になっている。また東京では大学の先輩の禅寺でお世話になり、仕事以外の全ての時間を修行に充てる事になる。先輩は優しさと厳しさを兼ね備えた人なのできっと有意義な修行ができると確信している。
 年明けから2か月は家族で旅行に出る。私の休暇の為に妻や子供達には大変な負担をかける事の罪滅ぼしだけではない。アジアから中東を経て、イタリヤからスイス、フランスを縦断する旅をする事で家族に意義ある経験をさせたいのである。予算の関係で豪勢な旅はできないかも知れないができる範囲で欧州の贅も経験させたい。いくらお金があっても精神的に、能力的に、体力的にもこれほど有意義な旅はおそらく2度とできないと言うものにしたいのだ。
 最後の1か月、これも疎かにできない。ここで気が抜けては元も子もない。現場復帰の準備をしながら、過去およびこの1年で自ら築いた人脈の棚卸しをすると共に、お世話になった多くの方々と連絡をとり、必要な方には直接お会いした上でお礼を述べる1か月にしたいのである。だからこの1か月はまさに自分の長期休暇の成果を確認する1か月でもある。
 このプランは具体的に問い合わせをして、その気があるなら受け入れると言った頂いているものである。しかし現在、私の勤務する会社にはその制度はないので、プランに終わるか辞職して新しい未来に賭けるかの選択が必要になる。3月中までに結果を出す必要に迫られているが、それは私の問題である。
 厚生労働省の年単位の長期休暇制度が浸透する事でこうした職業生活の再計画が無理なく行なわれ、有意義な人生の為にチャンスを無駄にする事のない時代が来る事を祈ります。


「リフレッシュでリフラッシュ」長尾 松代

 「すっごく、ラッキーだったわ」
 ご主人のアメリカ赴任と出産が重なった友人は、産休と育児休暇の2年間にアメリカで子どもを生み、大学院まで卒業した。
「赤ちゃんだけでなく、いろんなものを生み出して、いろんなものを得た」と話す。
 彼女が勤めている会社は大手の専門商社で、福利厚生はかなり整っているらしい。管理職につく女性も増えてきていると聞く。しかし、「出産や育児休暇の取得はその後の出世に響く」という風潮があり、彼女も妊娠がわかったときには、手放しで喜んではいなかった。「それをあなたが変えればいい」
 そういうご主人のひとことで、彼女は出産を仕事面でも有意義なものに変えたのだ。今、アメリカで得た経営修士号を武器に、社内でも一目置かれる存在になっているらしい。彼女いわく、「後輩たちが、『私も子どもを産んで、その間を自分のキャリアアップにつなげたい』と言ってくれるのが何よりの収穫だった」と。
 羨ましくなった。普通の会社であれば、長期の休みを取れるのは出産や育児休暇ぐらいではないだろうか。
 社会人になって、そろそろ15年。学生時代はあんなに勉強が嫌いだったのに、今では、もう一度学びたい、という気持ちがふつふつと湧いてきている。学校をさぼっていたあの時間を取り戻したいと本気で後悔している。社会に出てみて、自分に必要なもの、興味のあるものが絞られたのだと思う。勉強したくないときにいやいや学校に行き、勉強したくなったときには仕事に追われる…。なんとも、やるせないことだ。
 ときどき、私は空想する。「もし、1年間の休暇をもらったら、どうするか」と。答えは決まっている。
「アメリカでイラストの勉強をする」
 子どもの頃にテレビで見た『ポパイ』や『トムとジェリ−』。日本の漫画とは違う豪快さと自由を感じた。アメリカがどこにあるのか、どんな国なのか知らなくても、漠然とした憧れを持った。「いつか、行きたい」と。
 私は平凡に大学の教育学部を卒業し、普通に就職した。学生時代、留学するという選択もあったが、英語が苦手な上、教育学を極めたいとも思えず、結局はそのままになった。当時は教育学部で学んでいるからには留学先でもそれを専攻すべきと考えていたのだ。しかし、社会に出てみて、何かを学ぶということは、それ以外のことにも活きることを実感している。
 以前、和食の料理教室に通ったことが、普段の仕事を変えた経験からだ。料理にはいろんな手順がある。それがうまくいくか否かで、味や見た目は大きく変わってくる。「旬」と「今すべきこと」を大切に、チームワークが必要なことを痛感した。
 この経験は今、役立っている。私は通信教育の仕事をしているが、時代が何を求めているか、子どもの興味をどう引くか、そして、日常の事務をどう回していくか等、すべてに通じている。
「リフレッシュでリフラッシュ」
 社会人に大切なこととして、高校時代の恩師に言われた言葉だ。日常から離れることで、新しいアイデアがうまれたり、悩みがふっきれたりすることがある、そして、再び輝けるのだと。
 休日、私は趣味で絵本をかいている。初めのうちはかくだけで満足していたが、今は子どもの頃の気持ちがよみがえり、本格的にアメリカでイラストの勉強をしたい欲求にかられている。ただ、今の仕事に不満はなく、辞めてまで行く踏ん切りはつかない。
 「長期休暇制度があったらいいのに…」
 そう強く思う最近だ。アメリカには英語力不問で、1年間でイラストを学べる専門学校がある。英語が苦手でも、イラストのためであれば頑張れる気がする。
 そして、何よりも新しい世界を広げられることにドキドキする。自分から欲して「学生」をすることで、人生自体が前向きに変わりそうな予感がしている。

 先日、通信教育の受講生に出すお便りに簡単なイラストを添えたところ好評だった。目で訴えるものの影響力を感じて、ますます、イラストに興味を持つようになっている。
「何年か勤めたら、長期の休みをもらえないかな。留学後は仕事にうんと力を発揮するのに。会社にとっては、学費を出さずに社員が勝手に勉強してきて貢献してくれるのだから、おいしい話よね。『時間』がほしいわ」
 そう話すと、先の友人に言われた。
「あなたも早く子どもを作って、産休と育休をとりなさいよ」
 そちらも時間がかかりそうだ。思わず、ため息が出た。




公募概要

年単位の長期休暇 夢・計画・体験談

受付は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

厚生労働省では、職業人生の途中で、全生涯を見据えた働き方と生活のあり方を見直す機会としての「年単位の長期休暇」の普及プロジェクトの一環として、シンポジウムと同時に標記公募を実施します。
 すでに「年単位の長期休暇」によって、職業生活の再構築、職業能力開発、子育て充実、引退後の生活設計・準備等々、職業生活の活性化を実現された方の体験談を募集致します。企業側から、年単位の長期休暇制度の導入で、会社が活性化した、という事例も大歓迎です。
 あわせて、年単位の長期休暇がとれたらこんなことがしたい!というあなたの夢・計画広く募集します。
 未来社会においては、常識となっていく長期休暇制度…パイオニアの皆様のサクセス・ストーリー、年単位の長期休暇を人生・企業・社会の起爆剤とする人生設計への熱い思い・・・是非、どしどし語って下さい。

■応募先:〒181-0013東京都三鷹市下連雀3-1-29-401 
厚生労働省シンポジウム公募事務局
Tel:0422−70−6285 Fax:0422−70−6267 e-mail:info@at-now.co.jp

■応募内容
1)年単位の長期休暇を実際に取得したときの体験談(職業生活の再構築、職業能力開発、子育て充実、引退後の生活設計・準備など、職業生活の活性化を実現した体験談。企業側からの、長期休暇制度の導入で社会が活性化したという事例も可)
2)長期休暇がとれた場合の夢や計画を募集

■応募規定:郵送、FAX、メールで応募。字数2000字以内。用紙、書式自由。別紙にタイトル、〒住所、氏名(ふりがな)、年齢、職業、電話番号を明記し添付。

■応募資格:不問 体験談の場合は法定休業・休暇(育児・介護休業、年次有給休暇など)以外で6ヶ月以上の長期休暇を取得し、休暇前の職場に復帰した人、およびその企業。

■賞:
1)最優秀賞1編=賞状、図書券10万円分 優秀賞2編=図書券3万円
2)奨励賞3編=図書券3万円

■締切:2004年3月3日(水)(当日消印有効)

■発表:4月下旬、入賞者に通知

■主催:厚生労働省
■諸権利:入賞作品の著作権は主催者に帰属
[主催者から]
3月17日にシンポジウム「年単位の長期休暇制度の導入による職業生活の再設計を目指して〜仕事と生活の調和が個人と社会の活力を生む〜」を開催し、職業人生の途中で、全生涯を見据えた働き方と生活のあり方を見直す機会としての「年単位の長期休暇」の普及を図ります。公募は、同制度を決して夢物語ではなく現実味のあるものとして広報すると同時に、多くの方に望まれ必要性があることを浮き彫りにし、認知・普及に弾みをつけることを目的として実施します